何もない部屋で人が二人向かい合い、片方が壁を指しながら話しているイラスト
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説明は聞いた。でも、なぜその工事が必要なのか分からない

空室が続いている部屋について、管理会社に聞いてみます。

「あの部屋、どうなってますか」

今回は、工事の提案が返ってきました。ここをこうすれば決まりやすくなります、と。見積も付いていて、周辺の物件ではこういう内装が増えている、という説明もあります。

言っていることは、分からんでもない。ただ、聞き終わっても、本当にそれでいいのかな、という感じが残ります。

金額が高いから、というだけでもありません。工事の項目は分かる。でも、なぜ今、この部屋に、その工事をするのか。そこが、自分の中でつながっていません。

相手は迷いなく説明しているので、こちらの理解が足りないのかと思ってしまいます。そのまま工事が決まり、日程が決まり、請求が来る。

そうして、納得して頼んだというより、言われたとおりにお金を払った気持ちになることがあります。

「きれいにする」だけでは、仕上がりも狙いも見えない

たとえば、「きれいにする」「今どきの部屋にする」という言葉です。

難しい言葉ではありません。でも、それを聞いて頭に浮かぶ部屋は、人によって違います。

説明する方は、壁や床の色、照明、部屋に入ったときの印象、住む人のイメージまで思い描いているのかもしれません。一方、こちらは「新品になるんだろうな」くらいしか浮かんでいない。

同じ言葉で話していても、同じ仕上がりを想像しているとは限らないのです。

しかも、きれいになれば、それでよいとも限りません。今回の相談は、空室を決めたいという話だったはずです。

汚れや傷みが目立つから直すのか。内見した方に古い印象を持たれているのか。周辺の募集物件と比べて、設備が見劣りするのか。それによって、必要な工事は違ってきます。

「何を直すか」の説明はあっても、「何が問題で、それをどう変えたいか」が分からない。 それなら、決めきれないのも無理はありません。

提案の理由が分かる方に、現地で説明してもらう

そんなときは、もう一度説明をお願いしてみます。

「今回、なぜこの工事なのかを、部屋を見ながら教えていただけますか。提案の理由や工事の中身が分かる方にも、ご一緒いただけると助かります」

窓口の担当者だけでは、答えきれないこともあるでしょう。施工の方法は工事の担当者、内見での反応は募集の担当者というように、知っている方が違うこともあります。必要な話ができる方につないでもらえばいいのです。

現地では、まずここを聞いてみます。

「この部屋の、どこが決まりにくい原因だと見ていますか」

そのうえで、提案された工事と照らし合わせます。この壁を変えると、何がよくなるのか。床は変えなくてよいのか。全部やる必要があるのか。

たとえば、部屋が暗く見えることが気になっているなら、壁の色を変えたいのか、照明を変えたいのか。目の前の部屋を見ながらなら、「きれいにする」の中身を、一つずつ確かめられます。

仕上がりが想像できなければ、似た施工例の写真を見せてもらう。現地に集まるのが難しければ、部屋の写真や図面を使って説明してもらう方法もあります。

もちろん、工事をすれば必ず決まるかというと、答えは出ないでしょう。それでも、何を根拠に提案していて、どこからは見込みの話なのかが分かれば、費用をかけるかどうかを考えられます。

中身を分かってから頼みたい。そのための説明を求めることまで、遠慮する必要はないと思います。

自分の判断を伝えると、相手も相談すべきことが分かる

説明を聞いて、今回は壁を変え、床は残すことにしたとします。

「床はまだ使えるので残したい。今回は、部屋に入ったときの暗い印象を変えるために、壁を直す」

ここまで自分の言葉で言えれば、何を頼んだのかがはっきりします。仕上がった部屋でも、壁が新品になったかだけでなく、気にしていた暗さが変わったかを確かめられます。

その判断を相手にも伝えておくと、工事中の相談もしやすくなります。

たとえば、残す予定だった床に傷みが見つかったとき。「床は残しますが、この部分は部分的な補修が必要です」と、当初の希望と違ってきたところを相談できます。こちらも、なぜ追加費用が必要なのかを確かめたうえで決められます。

ただ「きれいにしてください」と頼んでいたら、どこまで直してほしいのかは相手の受け取り方に任せることになります。出来上がってから「そこまで頼んだつもりはなかった」「ここも直してくれると思っていた」と気づくこともあるでしょう。

自分が何をしたくて、どこまで頼むと決めたのか。それが相手に伝わると、相手も何を説明し、何を相談すればよいかがはっきりします。

詳しい大家だと思わせたり、業者を見張ったりする必要はありません。分からないところは聞いて、決めた理由を伝える。それが、工事を任せるときのやりとりを変えます。

次の提案では、分からないまま頼む前に一度聞く

同じことは、募集の話にもあります。

「反響が弱いですね」と言われたとき、問い合わせが少ないのか、内見には来るけれど決まらないのか。それだけでも、次に考えることは違います。

言葉の意味が分かることと、自分の物件で何が起きているかが分かることは、同じではありません。「そういうものか」で終わらせず、うちの部屋ではどういうことなのかを聞いてみる。

そうして一度、部屋を見ながら工事の理由を聞いておけば、次の提案では「あのときと同じ問題なのか、それとも違う課題があるのか」と比べられます。ほかの大家さんの話や、施工後の部屋を見ることも、提案を考えるときの参考になります。

施工の話は専門用語も多く難しいです。すべてを把握する必要はありません。まずは、次の一言です。

「工事の内容は分かりました。ただ、なぜこの部屋に必要なのかを、もう少し教えてもらえますか」

そこから、現地で一緒に見て、分からないところを確かめる。そのうえで、頼むのか、内容を変えるのか、今回は見送るのかを決める。

管理会社に任せることと、分からないまま頼むことは違います。力を借りながらも、何のためにお金を使うのかは、自分で分かって決めたいと思うのです。