空室の部屋を中心に、人影や建物、書類が点と線でつながるイラスト
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空室が出たら、管理会社から新しい入居者を募集するための条件について連絡が入る。家賃はいくらにするか、敷金や礼金はどうするか。管理会社から提案された条件を確認して、募集をお願いする。

管理を委託している大家さんにとっては、いつもの流れではないでしょうか。

ところが、募集を始めてしばらく経っても、なかなか入居者が決まらないことがあります。

「うちの部屋、ちゃんと募集してくれているのかな」

そう思って管理会社に尋ねてみると、「募集はしていますが、まだ決まっていません」「もう少し様子を見ましょう」といった返事が返ってくる。では、どのくらい問い合わせがあるのか、何が入居の決め手にならないのかと聞いても、詳しい状況までは分からない。

家賃を下げた方がいいのか、それとも今の条件でもう少し待つべきなのか。募集の状況が見えないままでは、大家さんも判断に困ってしまいます。

入居者募集は管理会社だけでは完結しません。実際に入居希望者と接する仲介窓口との関係や、募集情報や反響のやり取りをする仕組みによって、管理会社が把握できることが変わります。

入居者募集をはじめる前に、大家さんは何を把握しておかなければいけないのでしょうか。まずは、募集の仕組みから見ていきましょう。

1.入居者募集は、管理会社だけでやっていない

賃貸管理を委託している大家さんの場合、空室が出たら、まず管理会社と募集条件を決めます。家賃や共益費、敷金・礼金、入居条件などを相談し、募集を開始してもらうのが一般的な流れです。

管理会社は、物件の写真や間取り、設備、募集条件などの情報を整え、入居希望者へ物件を紹介できる状態にします。

ここから先の仕事は、管理会社によって進め方が違います。

自社で仲介店舗を運営している管理会社なら、その店舗で入居希望者を探し、管理している物件を紹介できます。一方、管理を中心に事業を行っている会社では、地域の仲介店に物件情報を提供し、入居希望者への紹介や内見案内を依頼します。自社の仲介店舗と外部の仲介店を併用する会社もあります。

例えば、大家さんが管理会社Aに募集を依頼したとします。A社は自社でお客さんを探すのではなく、地域の仲介店BやCへ物件情報を渡して紹介を依頼する。B店で部屋探しをしていたお客さんがその物件を気に入り、B店の担当者が内見を案内する。こうした流れです。

この場合、大家さんがやり取りする相手はA社ですが、実際に入居希望者と接するのはB店の担当者です。お客さんが何を気に入ったのか、何が気になって申し込みを見送ったのか。その情報を最初に知るのもB店です。

つまり、大家さんが管理会社に「募集をお願いします」と伝えたあと、その先には別の会社や担当者が関わることがあります。

この仕組みを知っておくと、募集状況が管理会社からすぐに分からない理由も、少し見えてきます。

2.自社で探す会社、仲介店に頼む会社

管理会社の募集体制には、その会社がどのような事業を中心に発展してきたかが表れます。

もともと賃貸仲介を手がけていた会社が管理業務へ事業を広げた場合、自社の仲介店舗や営業担当者を使って入居者を募集する体制が整っています。仲介手数料が重要な収益の一つですから、入居希望者を集め、物件を紹介して成約につなげる仕事が日常業務の中心にあります。

一方、建築や建物管理、工事などを中心に事業を行ってきた会社では、自社で仲介店舗を持たず、外部の仲介店との協力によって入居者を募集する体制を取っているケースも多いです。毎月の管理料や工事の受注などが収益の柱となり、入居者を探す仲介業務そのものは外部の専門店が担う形です。

もちろん、実際の事業構成は会社ごとに異なります。ここで知っておきたいのは、管理会社と一口にいっても、募集のために持っている機能や、仲介店との関わり方が同じではないということです。

外部の仲介店を利用する場合、物件情報は管理会社から地域の仲介店や取引のある店舗へ渡されます。しかし、どの仲介店へ情報を届けるか、どのように紹介を働きかけるかは、その管理会社の営業体制や取引関係によって違います。

大家さんは、入居者募集について「専任媒介なのか、一般媒介なのか」を意識していることも多いでしょう。

専任媒介は、原則として一つの仲介会社に募集の仲介を依頼する契約です。一方、一般媒介では複数の仲介会社へ依頼できます。

ただし、ここで区別したいのが、大家さんが何社に依頼するかということと、実際に何社の仲介店が入居希望者へ物件を紹介できる状態にあるかは違う、ということです。

一社へ入居者募集を依頼していても、その会社が他の仲介店へ物件情報を提供し、入居希望者の紹介を受けることがあります。反対に、複数社へ依頼できる契約であっても、それぞれの会社がどこまで積極的に募集活動を行ってくれるかは別の問題です。

大切なのは、専任か一般かという契約形態だけで募集の広がりを判断しないことです。

では、自分の物件がどの仲介店で紹介されているか、大家さんが一つずつ確認した方がよいのでしょうか。

そこまで細かく管理する必要はありません。管理会社に募集を任せるのは、その会社が持っている仲介店とのネットワークや募集の仕組みを活用するためでもあるからです。

ただ、管理会社が自社仲介を中心に募集するのか、外部の仲介店にも広く紹介するのか。その基本的な方針は、募集を依頼する段階で確認しておくとよいでしょう。

3.問い合わせは何件?実は分からないことも

募集が始まってしばらく経っても入居者が決まらないと、大家さんが気になるのは問い合わせや内見の状況です。

「先週は何件問い合わせがありましたか」「内見は何組ありましたか」。こうした数字が分かれば、募集がうまく進んでいるのか、どこに問題があるのかを考える材料になります。

ところが、管理会社に聞いても正確な件数が分からないことがあります。

その背景には、仲介店と管理会社で、日々の仕事の見方が違うという事情があります。

仲介店に部屋探しのお客さんから問い合わせが入ったとします。最初は、ポータルサイトに掲載中のとある物件を見て連絡してきた人でも、希望条件を詳しく聞いてみると、別の物件の方が合っていることがあります。仲介店は複数の物件を紹介しながら、お客さんが気に入る部屋を探していきます。

そのため仲介店では、問い合わせを受けたお客さんの数や、そのうち何人が成約したかという情報が営業上の重要な数字になります。問い合わせのきっかけとなった物件に申し込みが入らなくても、別の物件で契約が決まれば仲介の仕事としては成果になるからです。

一方、管理会社や大家さんが知りたいのは、特定の空室についての状況です。自分の物件のその部屋にどれだけ問い合わせがあり、何人が内見し、なぜ申し込みに至らなかったのか。それが分かれば、募集条件を見直すべきかどうかも考えやすくなります。

つまり、仲介店ではお客さんを中心に営業活動を管理し、管理会社では物件を中心に募集状況を把握したい。この違いがあるため、仲介店で受けた問い合わせが、必ずしも物件ごとの件数として正確に集計されているとは限らないのです。

内見数については、問い合わせ数よりも把握しやすい面があります。仲介店が部屋を案内するとき、管理会社へ空室状況を確認したり、鍵の場所を尋ねたりすることがあるからです。こうした連絡を記録していれば、どの物件にどれくらい内見が入ったかをつかめます。

しかし、最近は仲介店と管理会社が物件情報を共有するための業者間流通システムも広く活用されています。仲介店がシステム上で空室状況や内見方法、鍵の情報を確認できれば、その都度管理会社へ連絡する必要がなくなります。内見の手配が効率化される一方で、管理会社側に内見の記録が残りにくくなることもあります。

もちろん、問い合わせや内見を部屋単位で正確に集計している管理会社もあるでしょう。ただ、募集を任せているのだから、管理会社は当然すべての反響を数字で把握しているはずだ、と考えるのは現実的ではありません。

では、数字が十分に分からない場合、募集の状況はどうやって判断すればよいのでしょうか。

4.入居者を決めてくる担当者は、何が違う?

募集に強い管理会社の担当者は、仲介店へよく足を運んでいます。

地域の仲介店を訪ね、営業担当者と話し、自分が管理している物件がどのように紹介されているのか、現場ではどんな反応があるのかを確かめています。

こうした担当者は、大家さんへの説明も具体的です。募集が長引いているときにも、現場の状況を踏まえて話ができるため、提案は具体的で、大家さんからの信頼も厚くなります。

仲介店との直接のやり取りでは、数字だけでは分からない情報を得られます。

例えば、問い合わせ数そのものは把握できなくても、仲介店の担当者から「この設備があると反応がいい」「同じ家賃帯のこの物件と比較されがち」といった話が出てくることがあります。

それは、単に問い合わせが何件あったかという数字とは違う情報です。どのような条件で比較され、何が選ばれる理由や見送られる理由になっているのかが分かれば、募集の進め方を考える手がかりになります。

もちろん、仲介店へ何度も訪問すれば必ず入居者が決まる、ということではありません。関係性のできている担当者同士では、電話や業者間の情報共有システムなどを通じてやり取りする方法もあります。

重要なのは訪問の回数や方法ではなく、管理会社の担当者が、募集の現場で何が起きているかを理解していることです。

現場の情報が届いていなければ、管理会社の担当者自身も、なぜ入居者が決まらないのかをつかめません。状況が分からなければ、大家さんに説明することも、次の手を考えることも難しくなり、十分な根拠を示せないまま、家賃の引き下げを提案してしまうことになります。

反対に、具体的な情報を持っていれば、会話の内容も変わります。数字が十分に取れない状況でも、何を確かめ、何を見直すべきかを考えることができるのです。

5.管理会社に聞いておきたい3つのこと

ここまで見てきたように、入居者募集の進め方は管理会社ごとに異なり、募集を始めた後に把握できる情報にも違いがあります。

だからといって、大家さんが広告の掲載先や仲介店への紹介方法を一つずつ管理する必要はありません。そこは管理会社の専門的な仕事として任せながら、大家さん自身が経営判断を行うために必要な情報を担当者から引き出せる関係を築いておくことが大切です。

募集を依頼するときには、まず、管理会社がどのような方法で入居者を探すのかを聞いてみましょう。

自社の仲介店舗が中心なのか、外部の仲介店にも広く紹介するのか。募集情報はどこにどう掲載され、外部の仲介店にはどのように共有されるのか。細かな掲載先まですべて把握する必要はありませんが、募集活動の基本的な仕組みが分かれば、誰がどんな役割を担っているのか理解できます。

次に、募集開始後にはどんな情報を共有してもらえるのかを確認します。

問い合わせ数や内見数を把握できる体制なら、その数字を参考にできます。正確な件数を集計していない場合でも、仲介店からどんな情報を集めているのか、募集の状況をどのように確かめているのかを聞くことはできます。

そして、募集が長引いたとき、何を根拠に条件の見直しを提案するのかも知っておきたいところです。

家賃を下げるという提案一つをとっても、周辺の募集物件との比較によるものなのか、仲介店から寄せられた反応が根拠にあるのか、単に早く決めたいから安易に提案しているのかでは、大家さんの受け止め方も変わります。提案の根拠が分かれば、空室期間をどこまで許容するか、どの条件を優先するかといった、自分の経営上の事情と照らし合わせて判断できます。

管理会社へ募集を任せることは、大家さんが募集活動のすべてを把握し、指示することではありません。しかし、入居者が決まるまで言われるがまま、ただじっと待つ必要もありません。

管理会社が持っている募集の仕組みを理解し、何を把握できるのか、どのような情報をもとに提案してくれるのかを知っておく。そうすれば、空室が長引いたときにも、ただ結果を待つのではなく、管理会社と状況を共有しながら次の判断ができます。

次に空室が出たら、家賃や敷金・礼金の相談と一緒に、こんなことも聞いてみてください。

「うちの物件は、どういう方法で入居者を募集しているんですか」

その一言が、これまで見えにくかった募集活動を知る入口になります。