生成りの紙に黄土色と黒い線で描いた賃貸住宅と、針が上を向く大きなゲージ
公開

最近、ニュースで金利上昇の話を耳にすることが増えました。日本銀行が金利を引き上げたと聞けば、賃貸マンションを所有している大家さんも、銀行から借りているお金のことが少し気になるのではないでしょうか。

「うちのローンも金利が上がっているのかな」「これから返済額が増えるんだろうか」

そう思いながらも、毎月の引落額はこれまでと変わらず、家賃もいつもどおり入っている。今のところ返済に困っているわけではないし、銀行から届く書類も詳しくは見ていない。そんな大家さんもいらっしゃると思います。

日本では2024年から金利が上昇し始め、長く続いた低金利の環境が変わってきました。しかし、金利のニュースを見ただけでは、自分のローンにどのくらい影響があるのかは分かりません。

実は、毎月の返済額が変わっていなくても、借入金利はすでに上がっていることがあります。

では、自分のローンは今どうなっていて、金利の変化によって返済負担はどのくらい違ってくるのでしょうか。

金利が上がったのに、返済額が変わらないのはなぜ?

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を終了し、その後、段階的に政策金利を引き上げてきました。銀行の貸出金利もこうした動きの影響を受けますが、ニュースで報じられる金利の変化が、そのまま自分のローンに反映されるわけではありません。

ここで知っておきたいのは、次の3つの違いです。

  1. 日本銀行の政策金利が上がる
  2. 自分が銀行から借りているローンの金利が上がる
  3. 毎月のローン返済額が増える

この3つは、必ずしも同じタイミングではありません。

政策金利が上がると、銀行も貸出金利を見直すことがあります。ただし、自分の借入金利がいつ、どのくらい変わるかは、銀行との契約によって異なります。

さらに、変動金利で借りている人の中には、借入金利は上がっているのに、毎月の返済額が変わっていない人もいます。

例えば、一部のアパートローンには「5年ルール」という仕組みがあります。これは、金利が変動しても毎月の返済額を原則5年間据え置き、一定の時期に見直す仕組みです。

毎月の返済額には、借りたお金を返す「元金」と、銀行へ支払う「利息」が含まれています。金利が上がると利息の負担が増えるため、返済額が据え置かれている間は元金の減り方が遅くなります。そして、返済額を見直す時期が来ると、その時点の借入残高や金利に応じて新しい返済額が計算されます。

すべてのアパートローンに5年ルールがあるわけではありませんが、こうした仕組みがあるために、毎月の引落額だけでは金利上昇の影響に気づかないことがあるのです。

まず確かめたいのは、自分の借入金利が現在何%で、返済額がどのような条件で見直されるのか。銀行から届いた金利変更のお知らせや返済予定表を、もう一度確認してみてください。分からない部分があれば、借入先の銀行に尋ねてみるとよいでしょう。

金利が1ポイント上がると、返済額はいくら増える?

では、金利の違いによって、返済負担には実際どのくらいの差が生まれるのでしょうか。

例えば、借入金利が年1.5%から2.5%へ、1ポイント上がった場合を考えてみます。借入残高と残りの返済期間によって差は変わりますが、まずは残り20年に条件をそろえて、借入残高別に比べてみましょう。

借入残高毎月の返済増年間の返済増
5,000万円約2.4万円約28万円
1億円約4.7万円約57万円
1億5,000万円約7.1万円約85万円
2億円約9.5万円約114万円

※元利均等返済、残り返済期間20年。金利1.5%と2.5%で毎月の返済額をそれぞれ計算し、その差を示した概算です。

借入残高が5,000万円なら年間約28万円ですが、1億円なら約57万円、2億円なら約114万円。同じ1ポイントの金利上昇でも、借入残高が大きいほど返済額への影響も大きくなります。

年間114万円と聞くと、なかなか大きな金額に感じられるのではないでしょうか。これは、家賃9万5,000円の部屋が1年間空室だった場合の家賃収入に相当します。それだけのお金があれば、設備の更新やリフォームに充てることもできます。

「金利が1ポイント上がる」と聞くだけでは、どのくらいの負担増になるのか、なかなか実感しにくいものです。しかし、こうして実際の金額に置き換えてみると、借入残高によっては、決して小さな影響ではないことが分かります。

この表では分かりやすく借入残高だけを変えて比較しましたが、残り返済期間や金利の変化幅によっても結果は変わります。また、実際に毎月の返済額がいつ変更されるかは、借入契約によって異なります。

では、自分のローンではどのくらいの差になるのか、確かめてみましょう。

自分のローンでは、金利が変わるといくら違う?

先ほどの表を見て、「うちの借入残高なら、これくらいかな」と想像できた方もいるかもしれません。

けれども、実際には残り返済期間や借入金利もそれぞれ違います。そこで、自分の借入条件に置き換えて計算できる簡易シミュレーターを用意しました。

金利変更による返済額の比較
残り返済期間
元利均等・残り20年・金利差 +1.00ポイント
変更前の毎月返済額
482,545円
変更後の毎月返済額
529,903円
毎月の返済差(概算)
+47,357円
年間の返済差(概算)
+568,290円

同じ借入残高・残り期間で、元利均等返済の金利変更前後を比べる簡易試算です。返済額の据置きや過去の返済履歴は含みません。実際の返済額・見直し時期は借入先の返済予定表でご確認ください。

残り期間は月単位に換算し、金額は円未満を四捨五入しています。月・年の差額は丸める前の値から計算するため、表示額の差や12倍と数円ずれることがあります。

入力内容・計算結果は、このページ内だけで計算し、送信・保存しません。

入力するのは、借入残高、残り返済期間、変更前の金利、変更後の金利の4項目です。

例えば、以前は1.2%だった金利が現在1.8%になっているなら、その2つの金利を入力してください。まだ金利が変わっていない場合でも、変更後の金利欄に今後想定してみたい金利を入力すれば、その条件での返済額を試算できます。

計算結果には、金利の変化幅と、毎月・年間の返済額の差が表示されます。

このシミュレーターは、元利均等返済を前提に、同じ借入残高と残り返済期間で金利変更前後の返済額を比較するものです。過去の実際の返済額を再現するものではなく、契約による返済額の据置きも計算には含めていません。

また、入力された借入条件は、お使いのブラウザ内だけで計算され、CCC-Hには送信されません。

ご自身の数字を入力してみると、どうでしょうか。

これまで金利上昇のニュースを聞いても漠然としていたものが、年間何万円という具体的な金額になると、少し見え方が変わってくると思います。

そして、その金額が分かったところで、もう一つ考えたいことがあります。

増える返済負担を受け止められるだけの余力が、自分の賃貸経営にはどのくらいあるのか。

ここからは、その数字を経営に当てはめて考えてみましょう。

増える返済負担を、今の経営で受け止められる?

例えば、シミュレーターで年間70万円の返済増加という結果が出たとします。

この70万円が経営にどのくらい影響するかは、その物件の収支や今後の支出予定によって変わります。

家賃収入が安定し、毎年十分な現金が残っている物件なら、70万円の負担増を今後の収支に織り込めるでしょう。一方、空室が増えて家賃収入が減っていたり、近いうちにまとまった修繕費が必要だったりする物件では、同じ70万円でも資金計画を見直す必要が出てきます。

金利上昇による返済増加額だけでは、賃貸経営への影響の大きさまでは判断できません。 その金額を、今の経営がどれだけ余裕を持って負担できるかが重要なのです。

まずは、今の家賃収入から管理費や日常の修繕費、固定資産税などを支払い、さらにローンを返済したあと、年間どのくらいの現金が残っているかを確認します。

そのうえで、所得税などの負担や、今後の修繕のために確保しておきたい資金、家族の生活に使うお金も考えてみてください。金利の上昇で返済負担が増えれば、その分だけ使えるお金は少なくなります。

今後の支出を見込んでも十分な余裕があるなら、増加する返済額を資金計画に織り込み、今後の金利や返済予定を確認しながら経営を続ければよいでしょう。

一方、返済負担が増えることで資金繰りが厳しくなるなら、具体的な対応が必要です。

まずは、家賃収入と支出の見通しを整理し、どこに問題があるのかを確かめます。空室による減収が続いているのか、経費が増えているのか、借入返済の負担が大きいのか。原因によって、取り組むべきことは違います。

空室による減収が大きいなら募集条件や募集方法を見直す。経費の負担が重いなら、その内容を確かめる。こうして経営の中で改善できる部分を探しながら、今後の返済を続けられるかを見通します。

それでも返済が難しくなる見込みなら、行き詰まる前に銀行へ相談することが必要です。現在の収支や今後の資金計画を整理したうえで、返済条件についてどのような相談ができるかを確認しておきましょう。

金利の動きを自分でコントロールすることはできません。しかし、その変化によって自分の経営にどのくらいの負担が生じるのかは、事前に試算できます。

影響を早めに把握することは、必要な対応を考える時間を確保することにもつながります。

まずは、自分の返済予定を確かめてみる

金利上昇のニュースを聞いても、自分の賃貸経営にどのくらい影響するのかが分からなければ、不安だけが残ってしまいます。一方、実際の数字を確かめれば、これから何を考えるべきかが見えてきます。

まずは、銀行から届いた返済予定表や金利変更のお知らせを取り出して、現在の借入残高と金利、残りの返済期間を確認してみてください。

そして、記事中のシミュレーターに自分の数字を入力し、金利が変わった場合の返済額を比べてみましょう。

年間の返済負担がどのくらい変わるのかが分かったら、その金額を、自分の物件の家賃収入やこれから必要になる支出と照らし合わせてみてください。

今の経営なら十分に受け止められるのか、それとも今後の資金計画を見直す必要があるのか。そこが分かれば、次に何をすればよいかも見えてきます。

金利が何%になったかというニュースだけでなく、自分のローンがどう変わり、それが賃貸経営にどのくらい影響するのか。その数字を知ることが、これからの経営を考える第一歩になります。